ソフトウェア開発

1. はじめに

 「インターネット販売のプログラムを開発業者に依頼して、納品を受けたが、当社が欲しいと思っていた機能がない・・・どうすれば?」
 「当社はプログラム開発業者であり、数年前に納品したプログラムについてエラーが出るので直して欲しいと言われたが・・・どうすれば?」

 企業にとって、情報量の増大や複雑化に伴い、顧客情報を管理するシステムなどのソフトウェアが重要となっています。
 他方、情報システムの高度化に伴って、ソフトウェア開発を巡るトラブルも非常に増えています。
 当事務所では、今までにソフトウェアの開発に関する訴訟等に関与してきましたが、その中で、ソフトウェア開発の特殊性や、早めの対応の重要性を実感しました。
 以下、ソフトウェア開発に関するポイントをまとめました。

2. トラブル発生の原因

 このトラブルは、ソフト開発業者(ベンダー)とユーザー企業との認識のズレから生じているケースが大半であると思います。
 たとえば、ソフト開発業者は、「これだけ開発すればいいだろう」と思ってプログラムを設計し、制作を進めていたにもかかわらず、ユーザー企業が「これだけでは足らない」と主張するといったケースが多く見受けられます。また、ユーザー側が、ソフト開発業者に対して、いわば「丸投げ」状態にしていた場合などは、トラブルに発展しやすいと言えます。
 そのため、ソフトウェア開発においては、事前に、システム仕様書や業務内容、ソフト開発業者の役割などを明確に取り決めておくことが重要となります。
 ただし、ある程度システムを開発した上で、その後のシステム内容を決める、という場合も多々あります。したがって、トラブルを回避するためには、適時にシステム仕様書を取り交わすといった措置をとる必要があります。

3. ソフト開発業者の責任

 ソフト開発業者は、システム開発契約を「請負」(民法)と見れば、仕事完成義務を負うことになり、バグやエラーといった瑕疵については、瑕疵修補責任や損害賠償の責任を負うことになります。
 ただ、ソフトウェア開発契約書において、ソフト開発業者の損害賠償責任を代金以内にとどめるといった責任軽減を図ることも多く見受けられるところです。

4. 著作権の帰属

 情報システムの基礎となるソフトウェアは著作物であり、ソフトウェアを制作したソフト開発業者に著作権が帰属します。
 ユーザー企業としては、同種のソフトウェアが安価に同業他社に流れないように、著作権の譲渡を受けたいと考えることが多いです。他方、ソフト開発業者は、著作権を留保することで、同種の著作物を安価に制作することが可能となります。
 そのため、あらかじめ契約書等の書面によって、ソフト開発業者・ユーザー企業のどちらにソフトウェアの著作権が帰属するのか、または部分的に残すのかといったことを取り決めておく必要があると言えます。

5. 既存のパッケージソフトの利用

 システム開発においては、第三者が開発した既存のパッケージソフトを利用することが多く見られるところです。パッケージソフトを利用するためには、パッケージソフト開発者と使用許諾契約を締結する場合が多々あります。
 問題は、パッケージソフト自体に瑕疵やバグがあった場合です。
 ソフト開発業者とすれば、パッケージソフトに瑕疵やバグがあるかどうかは分からないため、責任を負いきれないといえます。
 そのため、パッケージソフトを利用する場合には、あらかじめ契約書等の書面において、ソフト開発業者の責任とパッケージソフトの開発者の責任の範囲を分けておくことが望ましいと言えます。

6. ソフトウェア開発に関するご相談

 以上がソフトウェア開発に関するポイントです。
 もっとも、実際に開発するソフトウェアの内容や、ユーザー企業の要望、必要となるシステム・ソフト等によって、注意すべき点は異なります。
 重要なのは、トラブルが大きくなる前に、仕様書の確認や、開発すべきプログラムの内容を書面で明確に定めるといった措置を早めにとることです。

 当事務所では、ソフトウェア開発に関するご相談やご依頼をお受けしております(→相談)。まずはお問い合わせ下さい。